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運慶展をみて考えたこと

先月、なんとか話題の運慶展をみることができた。運慶は間違い無く天才彫刻家だった。リアルを超えた存在感。迫力。そして、人の存在そのものをあぶり出すような悲しみを彫ることができた彫刻家だと感じた。素晴らしいの一言。ただ何故か心にぽっかり穴があいた状態で博物館を出た。そこに、私の思う「仏像」がなかったから。たぶん、疲れていたんだろう。「この仏様に私は祈ることができない」そう思った。彫刻と仏像。そこにある差は何か。祈る人の心の形に合わせ、変幻自在に姿を変える柔らかさだろうか。ミケランジェロの彫刻も美しく完璧な彫刻だと思うのだが、私は同じように神性を感じられない。もちろん彫刻としての素晴らしさは別だが。そう考えながら、イコンや曼荼羅に思いを巡らせた。何百年と人々の救いと祈りを受け止めてきた存在。決してリアルではないからこそ持ちうる強さ。

私も、イコンのような、曼荼羅のような強さを持つ作品が生み出せたら・・・。

マーク・ロスコ、長谷川等伯、あなたたちはどうやって、その高みに行くことができたのですか。